Contemporary Japanese calligraphy artist Hiroshi Ueta

2010年11月29日

新作紹介「れんめん(連綿)」


(一部拡大)
作品「れんめん(連綿)」RENMEN uninterrupted, continuously
墨、鳥の子紙 ink on paper
1550×700(mm)×2
 
屏風作品はこれで2作目です。

屏風に仕上げる時は
普段の額やパネルとして仕上げる作品より
もう少し考える事が多く成ります。

例えばこの作品ですと自立させる為に両端が前に出ます。
すると前後の距離ができますね。
真っ直ぐに書いた横線でも奥行きが出来
半面見た目の横寸法が短く成ります。

両端が前に出て、真ん中が奥に引っ込む。

これを画面の構成次第でもっと極端に見せることが出来ます。
例えば前に出る所はボリューム付けて
奥になる辺りは空間、もしくはあっさりと仕上げると
実際の寸法よりも奥行きがある様に見える。

確か桂離宮でも似た様な事をしていて
石畳の通路幅を向こうに行くほど若干狭くしています。
そうする事で
遠近感が強調され向こうまでの距離が
より長く感じられる訳です。

という事でこの作品は両端にポイントを付けて表現しています。

(画像はクリックして大きく見られるます。)

制作する時は、床に2枚の紙を置いて書きますが
実際仕上がる時は真ん中で折り曲がって、横寸法が短く見える事も考え
若干横広めの印象に成る様に書く様、努力しました。

連綿とは・・長く引き続いて絶えないさま(広辞苑)
      (サラサラと続けて書いた文字の
       文字と文字をツナぐ線を連綿線と言います。)

途切れない時間、歴史の流れの様な物をイメージして書きました。

左上から「れ」真ん中のフネフネした線が「ん」
右上に「め」があり、下に行って「ん」と書いています。

私の作品は紙にエンボスを付けたり、作品を立体的に表現した物もありますが
実はこういった、墨だけで仕上げる
シンプルな作品の制作が一番難しく苦労します。

線と空間だけの作品は
ある意味究極なのではないかとやはり思えてきます。
  
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Posted by HIROSHI UETA at 23:39Comments(0)作品/Works

2010年11月25日

新作紹介「痕跡」


作品 痕跡(コンセキ)
675×820(mm)
灰、墨、膠、定着剤


夏頃、木津川市を知ろうと事前に何度か伺い散策しました。

目に付きましたのは
昔の名残りの様な物です。
明らかに残そうとした物もありますが
気にもされずに残ってしまった物。
そして生活や風景の一部と成った物でした。

そういった物は町中で無くても
実は我々の周りにも多くあるのではないでしょうか?
それは意識しなくても未来に残されていく物に成る。
(良いにしろ、悪いにしろ)

色々と理由を付け
手当たり次第に手に入れ、我々は未来に何を残すのか?
大きく言えばどう生きるのか?

そういう意味も含めて「痕跡」というテーマにしました。

(画像はクリックして大きく見られるます。)

そのテーマ「痕跡」を書いた作品。
古い土壁の建物がある中、その土壁がハガれ
その剥がれた跡が何かに見える。 って事はあり得ますよね。
それを痕跡と見える様に制作した作品です。

土では重く、紙の上には定着しにくいので
火鉢にある灰を使いました。

灰と刷った墨、膠も足して混ぜ合わせ
紙に塗り、乾いた頃に
剥がすようにして文字を出す。

膠である程度定着していますが
引っ掻けばボロボロと剥がれます。
最終的は定着剤を全体に降りかけ
崩れにくくしました。

でももしかすると
この作品は痕跡も残らないかも知れないですね。


  
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Posted by HIROSHI UETA at 02:33Comments(0)作品/Works

2010年11月22日

新作紹介「道しるべ」

前回は大まかに新作の紹介をさせて頂きましたが
今回はもう少し詳しく新作の紹介を致します。

作品「道しるべ」2m×1m
墨、拝宮和紙(徳島・中村功氏制作)


私にとって人と出会う事、素材と出会う事は
次に進む一歩として非常に大事な事なのですが
この作品はその好例の一つでもあります。


(画像はクリックして大きく見られるます。)

以前、神戸のトアロードリビングスギャラリーにて
漆造形作家で京都芸大の准講師である栗本夏樹氏と
徳島の和紙漉き職人の中村功氏の(私の大好物の様な)2人展が開催されました。

栗本氏は私も多くの影響を受けた方ですが
ここで何度か紹介させて頂いてるので
そちらをご覧頂くとして
この時初めてお会いした中村氏も
多くを語る事も無く、飾り気のない素朴で
しかし、芯の通った感じのある素晴らしい方でした。

私も数多くの紙を見ているつもりでしたが
中村氏の漉かれる和紙は何か違って思えました。
存在感のあり、自然素材の荒々しさもあるのですが
どこか優しさと、つつまれる様な大らかさ。
「イイ物に出会った」という感じがしたのでした。

作品に使わせて頂いた和紙は
普通ではあり得ない大きさの手漉き和紙。
一般にあるのは大きくてこの2/3位が限界で
それ以上の物は出会った事がありません。
また繊維が長く、非常に厚く漉かれていますので
丈夫なのは間違いありません。

だからそれを切る事無く
そのまま生かせる方法として
この様な墨の少ない作品として制作致しました。

また今回「木津川アート」で展示した八木邸
素晴らしく大きな床の間があり
ここに華道家中川幸夫氏が残した様な大胆な仕事がしたいと
イメージが膨らんだのでした。

茶室「如庵」1985年 中川幸夫


今回拓本を取った事で出てきた手法でもあるのですが
「道しるべ」の「道」「るべ」は
その文字の型を作り後ろから叩いたり、押す事で
繊維をのばす様にして文字を飛び出させ
「し」を墨書する事で
道の象徴と成る様にしました。

展示しました時も
遠方からは「し」の縦線しか見えないのですが
寄ると「何か飛び出てる」と発見し、「ああ~」と
納得して下さる方が多くありました。

こういった紙の凸凹を見せる作品は
正面からのあかりより
横からの方が影が出来、より立体感を見せてくれます。
下見で丁度床の間の横にあかり取りがある事も分かって居ましたので
思った通りの見せ方が出来た様に思います。

中村功氏の紙と出会ったから出来た作品。
御協力頂いたトアロードリビングスギャラリーさんと
機会を下さった栗本氏にお礼申し上げます。

  
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Posted by HIROSHI UETA at 20:55Comments(2)作品/Works

2010年11月16日

作品紹介@木津川アート

木津川アート2010大変多くの方にお出で頂きありがとうございました。
11月14日を持って無事に終了致しました。

初めての開催にも関わらず
盛況の内に終えられましたのは
関係者は勿論、ボランティアの皆さん
地元木津川市民の皆さん、場所を提供頂いた方々の
協力あっての事と感謝致します。

私に取りましても、皆さんの温かさに甘えながら
非常に充実した12日間を過ごさせて頂きました。

今回嬉しかったのは
場所を提供頂いたNさんが私の展示を非常に喜んで頂けた事
Mさんを始めボランティアの方が作品を理解して下さり
私に代わって上手く説明して下さった事
何人ものお客さんが2度、3度友人や家族を連れてもう一度見に来て下さり
作品の説明をしてる姿を目に出来た事。

普段の個展等では味わえない
木津川アートならではの感触だったと思います。

細かい作品解説はまた次回としまして
残念ながらお出で頂かなかった方の為
大まかに今回出品した新作を紹介します。

入ってすぐの
襖に張った拓本作品。
「西 京都街道」は実際に木津川市にある石柱より採取した拓本。
それ以外の物は
この地にありそうで、実は無かった私の字を拓本として制作した物。


「和泉式部の歌」


あり得ない道標。
私から現在の人に向けて「あなたはどちらの生き方?」と。



今回一番人気だった衝立作品「縁(エニシ)」

一見何も書かれていないが暗い部屋から眺めると
「縁」の文字が影と成って見える作品。


屏風「れんめん」

過去、現在、未来に繋がる流れをイメージした作品。



「道しるべ」190×100(cm)

一見、一本の線が描かれた作品ですが
よく見ると「道」「るべ」の文字が浮き出ている作品。
徳島の中村氏制作の大きな手漉き和紙だから出来た作品。




「痕跡」68×82(cm)

古い家の土壁が剥がれて、それが文字に見えたらと思い制作した作品。
痕跡の文字が見えますか?



「いぶき」90.5×82(cm)

雪見障子に張った作品だが少し表面を歪ませてある。
その事で珊の影を歪ませ、影と墨の線を絡ませ
空気みたいなものを制作したかった作品。




「ながれ」140×49(cm)

土久里(トクリ)邸茶室にて展示されてました掛け軸。
昼間は正面から日が入るのでよく分からないのですが
日が傾き西日に成って来ますと軸全体にかかったエンボスが
浮き上がる様に成っていました。

今までとはチョット違った作風の物も
あった事と思います。
こういった物が制作出来たのも
木津川アートに参加出来た為。

今回面白い質問がありました。
「で。あなたは何をされてるの?」
「ハイ。書をやっています。(汗)」
確かに、らしくない事も私はやりますね。

私にとっては表具も作品の内ですから・・。
襖を張り替えたのも、屏風を作ったのも初めての挑戦でした。

  
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Posted by HIROSHI UETA at 01:37Comments(4)作品/Works

2010年11月13日

芸術の秋


芸術の秋は私達には非常に忙しい時期に成ります。

自分の個展等のイベントは勿論
知人の個展や、美術館の注目の催しも
この時期に集中します。

体が一つでは足りないですね。

さて、注目の個展を一つ紹介致します。
現在、大阪・天満橋あーとスペース夢玄さんにて開催されてます。
Tama・ma(タママ)さんの銅版画展「色、対話、鏡」です。
  「線を描いてきました
   人を描いてきました
   感情として“色”を
   起こりとして“対話”を
   道具として“鏡”を
」    -DMより

今回が初の個展という事だったのですが
初日に伺ってみますと
鮮やかな艶のある色彩と、線によるシンプルな半具象の人物表現が
印象的で、非常にアカぬけた作品群に「カッコいい!」連呼をしてしまいました。

シンプルな線で人物をしっかり捉えてる所を見ると
氏の普段からの鍛錬も伺い知る事が出来ます。

勝手ながら、私の作品の好みが似ていると感じていますので
私の作品が気に成る方は、きっとタママ氏の作品も
目に入りやすいのだろうなと思います。

この週末、氏も会場にいらっしゃるとの事でしたので
是非会場に足を運んで頂き、この秋風と共に楽しんで頂きたいと思います。

※また、私の参加してる木津川アートも残りあとわずかです。
 いつもとは少し違った楽しみ方の出来る作品群にしておりますので
 こちらの方もどうぞよろしくお願い致します。

  
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Posted by HIROSHI UETA at 02:26Comments(0)お薦めの展示会

2010年11月06日

木津川アートのコツ


八木邸の蔵に通じる通路
この奥には招待作家大西信明氏の驚きの作品が


木津川アート開催中です。
初日は祭日だった事もあり
オープンと同時に非常に多くの方にお出で頂き
それはクローズするまで止まりませんでした。

お出で頂いた方にも
「想像以上に楽しい」という言葉を多く頂き
どうなるかと思っていたこちらとしましても
ひと安心といった所です。

イベントの会場範囲が広いので
一日では周りきれず
二日掛けて街側と、山側を分けてる方もいらっしゃいます。
もし一日しか行けないという方は
ある程度絞ってスケジュールを組んだ方が
みたい物が見れなかったという事が無くなるかも知れないですね。

さて私の所は
色々と作品も紹介したいのですが
それはこれから来ようとしてる方には
失礼な事に成りますので
ネタばれは無しにしまして

庭園に面した八木邸一番奥のお座敷に展示して居ります。
靴を脱ぐのが面倒という事で
外からご覧に成る方もいらっしゃるのですが
中から見ないと分からない作品もありますので
是非座敷に上がって頂き
ご覧頂きたいと思います。

また八木邸も含め
会場とされている建物の素晴らしさ
一般に公開されるのは初めてという所も多くありますので
是非その辺もゆっくり楽しんで頂きたいと思います。

私も出来る限りは会場に居りますので
見掛けましたらどうぞお気軽にお声をお掛け下さい。
お待ちして居ります。

  
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Posted by HIROSHI UETA at 00:42Comments(0)個展・グループ展/Exhibition