Contemporary Japanese calligraphy artist Hiroshi Ueta

2015年02月23日

墨のすってる?株式会社呉竹見学-墨の現状と前置き

先日奈良墨で有名な株式会社呉竹さんに見学させて頂きに伺いました。
そこで色々見聞きさせて頂き、新しい発見等沢山あったのですが
それはまた次回にさせていただいて、その前置きをしておきます。

私の墨。頂いた物も結構多い。
中には戦時中に中国からというのも・・。

業界以外の方にとっては意外な事実なのかも知れませんが
プロで書をやってる人でも最近は墨をすらなく成りました。

もっぱら墨液。

美術館の様な大きな会場で展覧会が開かれるようになって
書道の作品も大きくなり、それを書く為の墨もすってられなくなった事と
墨液が以前と比べると良く成った事。
それらが大きな要因でしょうか。
(自動墨すり機なんて機械もありますが・・・。)

墨液が生れたのは学校教育の現場で
すっている間に授業が終わってしまい書く時間が無い。という声が上がり
墨メーカーがそれに答えた訳ですが。

今は逆に固形墨の存在を知らない若い人も増えたという。
私も実際に聞いた声では
濃縮墨液に水を足し、混ぜる為のマドラーみたいなモノと思っていたり。
水に浸けていると勝手に黒く成ると思っていたり・・など・・・。

悲しい現実です。

じゃあ何故墨をすらないといけないのかと言うと
私にとっては
・墨色の調節がし易い事。
・さらさらしている事。
・やっぱり墨色が良い事。
・表具する時にニジむ様な失敗する事がほとんど無い安心感。
・安心感と言えば、墨は千年以上もつと実証されている画材である事。
・沢山書いていても墨が無くなる度にするので、気分が一度リセットできる事。
一般の方にはそのすっている時間と手の感触も素敵なひとときなのかも知れません。

先日韓国の書家の方から頂いた韓国の墨。韓国の道具は初めてです。

業界では漢字系の人は濃い墨をたくさん使うので墨液。
仮名系の人は墨の伸びが欲しいので墨をする。 なんて風に成っていたりしますが
(例外的にカーボンの粉にボンドを混ぜて書いている所なんかもあります。)

そんな事は関係なく文化としても失うには惜しいとも思うのです。
文房四宝(筆、紙、墨、硯)と言いますが
墨液だと硯も必要無いですもんね。
バケツやプラスチックの容器で事足ります。

墨を使わなくなりますと墨職人はもちろんですが、硯職人も居なく成りますよね。
中国の有名な硯もありますが、日本でも素敵な硯を作ってる。
最近は持つ事を喜びと思えるデザイン的にも洗練されたのを作ってますから
一度ご覧下さい。
雄勝硯復興プロジェクト http://suzuri-ogatsu.jp/ogatsu-exhibition01/

墨も同様彫刻にしろ形状にしろスゴイ技術がそこにはあります。
(呉竹さんの墨の美術館。)
そして残念な現実も聞かされました。
それはまた次回と言う事で。



  
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Posted by HIROSHI UETA at 00:58Comments(0)文房四宝